暗記カードとか、Ankiとか

TACの渋谷の遠藤講師は、経営情報システムの講義の最初のほうで、「この科目は“経営情報ウルトラクイズ”みたいなもので、とにかく断片的な知識の暗記だから、暗記カードを作って覚えまくれ」と言っていた。

(ちなみに、暗記カードは、ポケットに入れて持ち歩ける名刺大くらいの大きさがおすすめとのことである。)

それを聞いてわたしが思ったのは……

「“ウルトラクイズ”って、たとえが古すぎるだろ」

ってこと。

「アメリカ横断ウルトラクイズ」というテレビ番組がどれほど画期的なもので、盛り上がったものだったか、若い人はご存じないだろう。

この番組が最初に放映されたのは、1977年。もちろんニクソンショックの後だから為替レートは自由化されているが、プラザ合意は遙か先で、1ドルはまだ200円以上もしており、LCCなんて当然無い。庶民にとってアメリカ旅行など、まったく「高嶺の花」だった時代だ。だからこそ、「ニューヨークに行きたいかー!」という叫びに、非常にリアリティがあったのだろう。

ニューヨークぐらい、片っぱしから友だちに借りまくれば決して行けない場所でなくなったのは、80年代末のバブル景気を経た後だ。

いまならLCCを使えばいくらで行けるだろうか? これがつまり、経済成長というものなのだろう。

書くのが苦手なもので

閑話休題。

講師の指導に素直に従って、渋谷の教室では名刺大のカードをめくっている人をよく見かける。「この人、すげーできるんじゃね? もしかしたら、クラストップか?」と、ひそかに目を付けている人がいるのだが、その人もカードを持っていた。

しかし、私は、紙の暗記カードを作っていない。

「企業経営理論」と「財務・会計」のときはB6サイズのカード、いわゆる「京大カード」(知的生産の技術!)を使って、情報整理をしていた。が、これはけっこう大変だった。

まず、自分はもともとかなりの悪筆である。ちょっと油断すると、自分で書いた文字が自分でも後から解読できなくなる(暗号化ではなく、ハッシュ関数処理に近い)。だから丁寧に書こうとするのだけど、激しい近視と乱視と老眼が混ざった視力で、カードにこまかい文字を書いていく作業は、時間もかかるし肩も凝るし、かなり苦痛だ。比較的大きいB6サイズの京大カードでさえこれだから、名刺大の暗記カードにちまちま書いていくなど、想像しただけで気が重い。

さらに、そうして書いたはいいが、あとからその項目への理解が深まって、書いてある内容を直したり、内容を付け加えたりしたくなることがよくある。

実は、これはTACのテキストの記述に説明不足が多いことも一因だが。(ちなみに「経営情報システム」のテキストは、内容の間違い、情報が古いままのところ、誤植などがいくつもあった(正誤表には出ていない)。仮にも「テキスト」なのに、いくつも間違いや誤植があったら、“間違いだらけ”って言われても仕方ないのではないか?)

そんなとき、紙のカードの場合、修正が大変だ。消せるポールペンで書いているので、直せることは直せるが、だんだん汚くなっていって結局作り直しになる。カード作りは目的ではなくて、単なる手段なのだから、そんなところに必要以上の時間をかけたくない。

可能なら、バイト代を払ってだれかにアウトソーシングしたいくらいだが、それが難しいところが悩ましい。「どんな項目を、どうやってカード化するか」ということ自体が、個人の学習内容と密接にリンクしているから、機械的には作れない。

Ankiでのデジタル運用に切り替える

「企業経営理論」と「財務・会計」であわせて250枚程度のカードを作っただけだけど、すっかり嫌になって、「運営管理」からは原則的に紙のカードは作らず、デジタル(PC+スマホ)で運用することにした。ソフトウェアやアプリもいろいろ試したが、結局、昔からある(以前に英語の勉強でも使っていた)「Anki」が一番使いやすい。(私のスマホはアンドロイドOSなので、iPhoneのアプリは知らない)。

これは海外で作成されたソフトだが日本語のドキュメントもたくさんあるので、興味ある方はググってください。ソフト自体も日本語化されています。

https://apps.ankiweb.net/
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.ichi2.anki&hl=ja

「Anki」はオープンソースのソフトウェアで、スマホ版の「AnkiDroid Flashcards」は、PC版とは作者は異なるが、その同期機能は、非常に優れている。入力はPC、閲覧はスマホという使い分けが簡単にできるのが嬉しい。オープンソースで利用料が無料というのもポイントが高い。同期に使うための専用クラウドも用意されていて、データがバックアップされるのも、安心だ(といっても、今時ふつうの個人データだってクラウド保存が多いかもしれないが)。

カスタマイズ性が高いため、またオープンソースのソフトウェアにつきもののとっつきにくさがあるが、使い慣れると非常に便利だ。自分のように「手書きは嫌い」という人には、おすすめできる。

デジタルの良さと紙の良さ

Ankiはテキスト以外の情報も扱えるが、PCでは図表データを作るのは大変だ。簡単な図をささっと描くのは、紙の方が断然速いし、自由度も高い。だから、どうしても図表を抜粋したい場合は、紙のカードかノートにまとめている。図表が多く出てくる「財務・会計」や「経済」は、やっぱりノートか、大きめのカードがメインになる。

情報整理の基本的な考え方として、ソースの媒体がばらけるのは好ましくない。だから本当は、紙で書いた図表をスキャンするなりして、Ankiに同期させるのが、正しい情報運用方法なのだろう。が、資格試験対策のように情報の範囲と期間が狭く限定されたプロジェクトなら、多少ソースが分散しても困ることはあまりないかな、と考えている。

それに、スキャンしたデータは中身の検索ができないので、価値が半減する。デジタル化されたテキストの価値の多くは、検索で使い回すのが簡単なことなのだから(超整理法!)。

Ankiを、具体的にどうやって使っているか(どう書いているか)は、また別記事で書きたい。

(実は、あまりうまくないやり方で進めてしまって、ちょっと後悔していて、運用のヒントがいただければ、とも思っている。)

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コメント

  1. M より:

    結論からいいますと「過去問を解いて解いて解きまくる」ことをお薦めします。
    僕も暗記カードなどは作ってませんが、そのかわり過去問を解いて分からなかった問題はマークシートの裏の白紙にメモをしました。新方式以降の一次の過去問(10数年分)は3周ほどしましたが、だんだんと記憶量は増えますのでメモは減ってきます。その上で一次の直前期(2ー3週間前)に3周しても記憶が定着しきれなかった内容を、各科目A4 2ー3枚にまとめ、ネットで語呂合わせなども調べながら最後の仕上げをしました。
    そんなわけで、私も闇雲に暗記カードを作ることには、時間ばかり取られて勉強した気に陥りがちなのであまり賛同できません。暗記にはインプット以上に演習を通じたアウトプット訓練が不可欠です。過去問を解きまくった上で、必要最小限の項目をまとめた方がはるかに時間効率が高いように感じます。
    なお注意点は法務と中小です。これらは前提となる知識が毎年変わっていますので、過去問演習はせいぜい過去数年分しか使えません。そのため、この2科目については受験校の最新の模試を有効活用するにしても、演習だけで暗記をカバーすることは難しいかもしれません。そのため、暗記カードなりなんなりの補助手段もはじめから必要に思います。この2科目は受験校の先生のノウハウが特に重要な科目です。
    ご参考になれば。

    • 百軒店 より:

      Mさん、コメントありがとうございます。
      科目による違いはありますね。企業経営理論、財務会計、経済あたりは、たしかに過去問演習がとくに有効だと思います。
      ただ、過去問やりこむと、答えを覚えてしまう(この問題はアが正解、みたいに)ので、効果が薄れてくる気がするので、そこが課題でしょうか。

      経営情報は、けっこうUptodateな問題が混ざるので、講義やテキストでの最新情報のフォローが必要になる科目の気がします。ここ数年はけっこう難化していますし。

      PC+スマホでの運用の良いところは、スマホはいつも持っているので、いわゆる隙間時間を活用できるところです。外食しているときとか、あと私はよく夜に散歩をするのですが、散歩しながらでもスマホで勉強できるのでとても助かっています。

      また、カード作りの際も「ググって調べてそのままコピペ」といった感じで作れるので、紙に手書きするよりはずっと短時間で作れます。これもメリットですね。

      おかげで、経営情報の答練では満足のいく結果が出せました。

      だいぶ、疲れてきたというか、勉強に飽きてきた感じもあるのですが、残り2科目、経営と中小、もう一踏ん張りします。

      • M より:

        「過去問やりすぎると答えを覚えて効果が薄れることが課題」という点についてコメントします。僕は実はこの悩みには遭遇せず、毎回新鮮に過去問演習できました。理由は新方式となった2001年(平成13年)以降の全ての過去問を回したからです。「答えを覚えて困る」という方もいらっしゃるようですが、よくよく伺うと過去問の遡りが高々直近の数年分に留まっている方が多いようにも感じます。とてももったいないことです。
        ところで、情報も内容が更新されてるとのこと。さすがは2日目の人呼んで法務、情報、中小の「暗記3兄弟」ですね。そうすると活用できる過去問の範囲が限られてくるので、Ankiの活用は良さげですね。とても参考になります。

        • 百軒店 より:

          Mさん、ありがとうございます。
          そういえば、自分の場合はまだ5年分(最新の過去問集の分)しか当たっていないからもですね。
          過去問も本当はデジタル化されて、同じ科目のたとえば過去10年間の問題から毎回ランダムに出題されるとか、ジャンル別、難易度別に選択できるとかの機能を持ったアプリがあると、すごくいいんですが。