学生時代は数学との相性がよくなくて、中学の時は高校受験に合格できる程度だけ勉強した。高校のときは定期試験での「赤点」を取らない程度の勉強だけする(つまりほとんど勉強しない)つもりだったが、見事に赤点をくらって追試を受ける羽目になった。当然、大学入試では数学のある学校は避けた。
いま、中小企業診断士試験(財務・会計や経済学)に必要な数学を勉強しているが、必要な範囲に限って勉強してみると、これはこれでなかなか面白い。
では、なぜ中高生の時に数学に興味が持てなかったのかと考えると、他のことばかりに興味が向いていたということもあるだろうが、学校や教師が下らなかったということもあるだろう。じっさい、下らない教師が多かったと思う(立派な先生も少しはいた)。これは、当時は「体罰」が当たり前で、不当に殴られたという記憶ばかりが残っているからかもしれない。
高校を卒業して30年以上経ち、社会でそれなりに経験を積んだ視点から振り返ると、教師に殴られたことで、“愛のムチによって反省して人格が陶冶された”といったことは一切無く、不当な暴力を受けたという恨みと、暴力をふるう教師に対する軽蔑の念しか残っていない。
体罰を受けたことによって得たのは「体罰は教育方法として完全に間違っている」という確信だけであり、つまりは体罰は間違っているということを教えられるために体罰を受けたのかと思うと、これほどバカバカしいことはない。
いまは、多くのまともな学校では教師による体罰が公然と行われるなどあり得ないだろう。その一点だけを見ても、人類というものが進歩しているとわかる。
閑話休題。
覚えては忘れ、覚えては忘れ
「財務・会計」のファイナンス理論の中では「分散」や「標準偏差」という統計概念が重要な役割を担っていた。これは(脇役的にだが)「運営管理」にも登場し、そしていまやっている「経済学」でも関連しそうな匂いのするところがある。
ところが、久しぶりに復習してみたら、その求め方をさっそく忘れていた。
TACの「財務・会計」テキストをひっくり返したところ
「期待収益率(リターン)や標準偏差(リスク)の計算方法は確実にマスターしておく必要がある。(略)第2次試験での出題実績もある。」
と書いてあることに、はじめて気づいた(あるいは、以前に読んだけど忘れているだけかも)。2次試験にも分散だの標準偏差だのの計算が出る可能性があるのか、これはやばいと、確実にマスターすべくネットで調べたりした。そうしたら面白いコツがわかったので、覚え書きをしておく。
一般的な分散の求め方と、ケースに確率がある場合の求め方
中小企業診断士の過去問で分散の計算が出題されているのは、個別証券のリスクを求める問題で、各ケースの値が確率変数になっている。そのため、TACのテキストに書かれている公式も、それに直対応して、
分散=Σ{(各状況における収益率-期待収益率)2乗×発生確率}
となっている。
自分は、問題を解くときは「表」を作って、上から一行ずつ、左から右に計算していた。(TACのテキストで勉強した人は、同じような解き方をしている人が多いのではないかと推測する)。
だが、これが覚えにくく間違えやすい。しかも発生確率が等しいケース設定(0.25が4ケースなど)のときでも、無駄に発生確率を計算してしまう可能性があるかもしれない(そんなアホは自分だけか?)。
統計学のテキストやネットの解説などでよく書かれている分散の求め方は、各ケースの発生確率が等しい場合で、
(1)値の平均を求める
(2)偏差(各値-平均値)を求める
(3)偏差の2乗の値の平均を求める
みたい感じだ。『経済学と経済学・ビジネスに必要な数学がイッキにわかる』(石川秀樹)でも、このような記載だった。これは覚えやすい。
各ケースの値の発生確率が等しければ、確率を乗じる必要がなく(1)(3)では単に値の個数で割れば平均が求まる。
ここで考えてみると、ケースに発生確率の違いがある場合は、単に(1)(3)の「平均」を確率で「加重平均」にしてやればいいんじゃない? 「実現される各値を確率で加重平均する」とは、つまり期待値を求めるということだよね。
(1’)値の「確率での加重平均(=期待値)」を求める
(2’)偏差を求める
(3’)偏差の2乗の値の「確率での加重平均(=期待値)」を求める
覚え方のポイントは、まず限定的なケースの上(1)~(3)を覚える。これは何度か例で計算してみればすぐに覚えられるだろう。そして「確率がある場合は、平均を加重平均に置き換えればいいのね」という風に覚えればよい。
計算量自体はあまり変わらないが、TACテキストの公式を暗記するより覚えやすく、たぶんこちらの方が汎用性があるのではないだろうか?
加重平均はWACCでおなじみなので
「期待値」と聞いて、頭の中での変換無しにすぐにイメージが浮かぶ人は、確率の加重平均は、単に「期待値」で覚えておけばいいだろう。自分の場合、「あれ?期待値ってなんだっけ?」となることがある(バカなのか?)ので、確率での加重平均で覚えた方がずっと覚えやすかった。
これは、WACC(他人資本調達コストと自己資本調達コストの加重平均)の問題で加重平均計算を使いまくるので、よくなじんでいることもある。
分散公式を知った
ネットで調べていると、「分散公式」というのが見つかった。これは高校で数学をきちんと勉強した人ならだれでも知っていることなのかもしれない。だが、自分は初めて知った。
分散公式は、
分散=(「各値の二乗」の平均)-(「各値の平均」の二乗)
で、覚えやすい。ただし、これはケースに確率がない(生起確率が均等の)場合なので、確率があるときは、
分散=(「各値の二乗」の加重平均)-(「各値の加重平均」の二乗)
としてやればいい(「確率での」は、書かなくてもわかるので省略)。あるいは、
分散=(「各値の二乗」の期待値)-(「各値の期待値」の二乗)
でも同じだけど、上記で書いたように、(確率での)加重平均で覚えておく方が、自分は忘れない。
試してもらえがわかると思うが、この公式を使うと計算量が減り、計算しやすい。与えられた表を1行ずつ左から右に計算していくやり方より、たぶん計算間違えもしにくくなる。人類の進歩のおかげだ。
いずれも、数学が得意な人から見たら、当たり前でバカバカしいことかもしれないが、数学が苦手だった自分はこういうことをひとつひとつ考えていくことが、けっこう楽しくて、それはなんだか得した気分だ。
<追記>
単純に分散または標準偏差を求めるだけの問題であれば、公式を使った方がシンプルだ。しかし、複数の設問があって、設問1は分散を求める、設問2では「偏差」を使って別の計算をしなければならない(共分散を求める、とか)という場合もある。その場合は、最初から1ステップずつ解く方式で解いた方がいい。
したがって、両方の方式で解ける方がいいし、もしどちらか1つだけを覚えるなら、表を作って1ステップずつ解く方式の方が応用が効くだろう。