『財務3表実践ドリル』『財務3表一体理解法』の使い方

以前講師に勧められたと書いた『財務3表実践ドリル』(國貞克則、日本経済新聞出版社)を読んで(というより「やって」)みた。なるほど、CFを理解するにはなかなか良かった。とくに直接法と間接法とが、いちいち比較できるところがいい。

ただ、本当に骨子の部分しか取り上げられておらず、しかも1テーマが1問(というか1作業)なので、「ドリル」という点からすると、ボリュームが不足している。『ドリル』というなら、練習問題をもっと加えてほしかった。

ただ、説明自体はとてもわかりやすかったので、こちらも評判のいい『財務3表一体理解法 増補改訂版』(同、朝日新書)を見てみたら、中心となる部分は『実践ドリル』とほとんど同じだった。最初に「お題」が与えられて、そのお題に沿った数字を財務3表に当てはめて財務3表を作りながら解説していく形式になっている。

『財務3表一体理解法 増補改訂版』の使い方

『一体理解法』はサイズが小さい新書なので、本に直接数字を書き込むのは厳しいが、親切なことに、書き込み用のシートが折り込まれている。これを拡大コピーすれば『実践ドリル』と同じように書き込んで使える。ただ、何枚もコピーするのは面倒だし、もったいない。そこで、自分は次のように使った。

まずエクセルで、本と同じように財務3表のひな形を作る(もちろんGoogleスプレッドシートなどでもいい)。人に見せるものではないので、罫線などは描く必要はない。自分がわかりやすいように行をそろえたり、集計項目のセルだけ文字をボールドにしたりすればいい。また、『実践ドリル』のように入力欄を2列にする必要はない。

ちなみに、著者の会社Bona Vita CorporationのWebサイト(http://www.migiude.com/)からは、エクセルのひな形がダウンロードできるのでこれを使ってもいい。私は、ひな形を作ることも自体も勉強になると思ったので、自分で作った。

そして、各項目のタイトル(お題)だけを見て、それにしたがってエクセルファイルに数字を入力する。それから、本とつきあわせて合っているかを確認して、解説を読む。

確認できたら、(ファイルではなく)シートをコピーする。ここがポイントだ。お題が進むごとに数字の上書きが必要となるが、『実践ドリル』のように入力欄を2列作っていないので、上書きすると前の数字が消えてしまう。すると、入力の途中で誤りに気が付いて修正したいときなどに、元の数字がわからなくなってしまう。そこで元の数字を残しておくため、お題ごとにシートをコピーして使うのだ。最初からお題の数分シートをコピーしておいてもいい。いずれにしても20シートくらいの数なので、たいした手間ではない。本についているシートを数十枚もコピーするよりずっといいと思う。

『一体理解法』は、ドリル以外の部分も良い

『実践ドリル』の方は「実践」とついているのだが、名前に反してこちらの方が易しい。なので、ある程度知識のある人なら、最初から『一体理解法』だけを読んでもいいと思う。

個人的には、『一体理解法』では、第4章「さらに理解を深めたい人のために」も良かった。TACのテキストではさらっと流されていてほとんど解説がない、BSの純資産の部や連結会計についての概要が説明されていて、知識がかなり整理された。純資産の部の内容や連結をTACテキストレベルよりくわしく知りたい人にも、おすすめできる。

一方、『実践ドリル』の方には、財務諸表からなにを読み取れるのかという、同じ著者のシリーズで言うと『財務3表図解分析法』に含まれる内容の一部が書かれていて、これはこれで勉強になる。


『財務3表実践ドリル』、書き込みできるようになっている。

『図解3表一体理解法』にも、折り込みで記入用シートがついている。書き込む科目が『実践ドリル』より多いことがわかるだろう。

やっぱり仕訳の知識は絶対必要

診断士試験科目の「財務・会計」には、大きく
・財務会計
・管理会計
・ファイナンス
が含まれる。

これまでに簿記などの勉強をしたことがなくて、診断士の勉強ではじめて会計に触れる人であれば、この『財務3表一体理解法 増補改訂版』を熟読して、実際に手を動かして(ここが重要。読むだけじゃだめ)お題を解けば、財務会計の基本の「半分」くらいはマスターできるのではないだろうか。もちろん、1回やるだけではなく、完全に理解できるまで、何周か回す。

ただし、財務3表のつながりがわかるだけではだめで、仕訳についてもしっかり理解しておく必要がある。仕訳がわからないと、この本の内容も本当に身につけることはできないように思う。読んだときは「なるほど」と思っても、それで終わってしまって応用がきかない。

なので、会計の初学者の人なら、この本とあわせて簿記3級のテキストを1冊読んで仕訳の基本を身につけることをおすすめする。こちらも「回す」ことがポイント。そうすれば、財務会計の基本の「大部分」がマスターできるだろう。

タイプ別おすすめ

まとめると、以下のように使うとよいのではないだろうか。

(1)会計をまったく初めて勉強する人
『実践ドリル』+簿記3級のテキスト → その後『一体理解法』

(2)TACのテキストを読んだけど、いまいち理解に自信がない(とくにCF)人
『実践ドリル』、その後『一体理解法』

(3)財務3表の関係についてある程度理解が進んでいる人
→『一体理解法』

参考まで。

書いてマスター! 財務3表・実戦ドリル
國貞 克則
日本経済新聞出版社
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【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)
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